KSeries Esuleの再セッティング
とりあえず、次のようなことをしました。
- スピーカLS-K1の下に挟んであったAudio Technica製AT6098(ちなみにこれは、購入時にKENWOODの営業さんよりただで戴きました。)を取り外し、ブチルゴム積層+テフロンテープAGF-100による自作インシュレータに変更した。また、R-K1のインシュレータの下にソルボセインシートを5cm角程度に切断した物を挟んだ。
- 両スピーカの間隔を4cm程度狭めた。また、若干センター気味に振っていたスピーカの正面角度をほぼ0度にした。さらに、両スピーカを3cm後方に移動した。
- スピーカケーブルをスピーカ付属のものから、DENON AK-2000に変更した。
- 試聴位置をこれまでよりおよそ50cm程度後方にした。
これらの結果、「低音が無い」などという状態はほぼ解消されました。しかし、スピーカを後方に追いやったり、センター振りをやめたせいか、今度は立体感が無くなった気がしないでもないです。あと、高音域に若干癖というか、気になる音が混ざることがありますが、これは単純にエージング不足かもしれません。まあ、いずれにせよ、ベッドサイドのオーディオとしてはこの位が頃合なのかも知れません。これ以上手を加え始めると、「寝室のオーディオ」から「オーディオルームに寝具」にもなりかねません(苦笑)。
さて、この状態での音質ですが、正直この価格を考えれば、十分すぎるものではないでしょうか。驚いたのは、『超絶のパーカッション』で、かつてアンプを買い換える前のメインシステムではとても聞き続ける気になれなかった「モビリストとフィクシスト」が、このシステムではわりときちんと聴けたことです。また、『日本の美音』も、スケールはどうしても小ぶりですが、それほど不足を感じません。
と言うわけで、クオリティと言う点ではかなりの実力を持っているこのシステムですが、一方で良くも悪くもソフトの質により鳴り方が大きく変わります。優れた音質のソフトであれば、透明感に富み、非常にフレッシュな音を楽しむことが出来る一方で、あまり音質に優れないものであると、思わず「なんだこれは」と呟いてしまうほど苦痛な音になります。あと、ジャンルにも少々拠るようで、アコースティック系のものは殆ど問題なく聴けますが、それ以外は結構辛い感じです。この辺が「良い物は良く、悪い物もそれなりに鳴らす傾向」にある高額機種とは趣が異なるように思います。
以上、色々書きましたが、このシステムは物自体はコンパクトかつスマートに収まり、値段も性能を考えるとリーズナブルで、また、性能を無視したとしても「ちょっと贅沢をしたい」と思えばそれなりの価格だと思うのですが、一方で、音質や使いこなしなどは、一般的なそれよりも「玄人向け」のように思えます。下位機種R-K801や同700などの特徴の一つである「AUTO ROOM EQ」機能は本機には無く、その分、音質調整は原始的な手法による地道な調整が必要になりますし、バスレフダクトが後方にあるため、背面の状況にバランスが左右されやすい、また、ソースを選ぶ傾向もある…などと言った点で、今までオーディオには全く興味が無く「高いのを買えば取り敢えず良いのだろう」というつもりで購入した場合には、あまり満足の行く結果にならないかもしれません。一方で、それなりにオーディオの経験があれば、音自体の好み云々はあるにせよ、クオリティについては値段相応かそれ以上に満足が行くものではないか、と思います。
最近、音響メーカがこぞって「リタイヤの世代」を狙い、こういった比較的クオリティの高いコンポを発売していますが、一方で玄人向けというか、比較的難易度の高いシステムである以上は、メーカ自らがこれらの製品の使いこなしやライフスタイルを提案し、より趣味性の高いものに仕立てていかねば、この先続かないのではないでしょうか。本システム購入時にお話をさせていただいたメーカの営業さんからは、大変な情熱と誇りを感じ、それに魅かれてこの製品を今回購入したわけですが、もしわしが仮に、これが始めての高額オーディオだったとしたら、ろくに使いこなすことも出来ず「値段の割には下位機種との差が良く分からない」「営業に言いくるめられた」としておそらく次は無かったと思います。そういった意味でも、新規ユーザへの啓蒙は、メーカの戦略としてもとても大切なことだと私は思います。従来の試聴会やショールームとは異なる、自社製品向けの使いこなしの会みたいなものをそれぞれのテーマ毎に(可能な限り無償で)実施するとか、そういった何かで今のオーディオ界の停滞感を払拭できない物でしょうか。