昨夜、ダイヤトーンのかつての名器ともいうべきDS-10000 Klavierの極上中古がヤフオクに出品されていることを知り、特にエンクロージャーの仕上げの素晴らしさ(私見では、そのまま宮内庁あたりに納めたと言われても信じてしまいそうなくらい)に惹かれ、一瞬本気で落札してみようかな、などと考えましたが、かつてのオーディオ遍歴の中でダイヤトーンとは決別を選んだ以上、おそらく入手してもあまり満足できないだろうなと思い、考えを改めました。
このエントリーでは、そのダイヤトーンサウンドと決別を選んだ時の話を書いてみたいと思います。
「スピーカーを買い換えるから、一緒に試聴に付き合って欲しい」、父にそう言われたのは1993年の初夏の頃だったと記憶します。それまで、自宅の父のオーディオシステムはソニーCDP-777ESA、山水AU-D907XD、ダイヤトーンDS-77HRを中心としたシステムで、わしもそのシステムの音で耳を鍛えてきたこともありスピーカーの買い替えとなればそれは自分の基準が変わることを意味しますので、非常に強い関心と期待をしつつ、秋葉原のオーディオ店に向かいました。
そのオーディオ店はいわゆる専門店で、スピーカーも量販店では殆ど目にすることのないような高額なものが並んでおり、それだけで圧倒されてましたが、父は「クラシックを中心に聴く」とのことで、お店の方のお薦めでタンノイStirling/TWや、当時人気を博していたソナス・ファベールのELECTA AMATORなどを聴きましたが、それぞれに良さがあれど、何かこう独自の魅力に欠けるというか…。そしてその次にインフィニティのKappa 7.1iとRenaissance90を聴いたのですが、Renaissance90は一聴して「ああ、これは他のスピーカとは違う!」と感じたのでした。特に違う、と思ったのは中高域で、他のスピーカーはシンバルやハイハットが「シャンシャン」と当たり前のような音で鳴るのに対し、Renaissance90は「スンスン」と若干引っ込んだ感じになるものの、金属を叩いているというその質感が物凄くリアルだったり、他のスピーカーは音が前に張り出してきてそれが音場を形成しているのに対し、Renaissance90はスピーカーの後ろ側も含め、音がその場の空気として漂うような音場感を形成したのです。特に後者はこれまでわしがスピーカーで経験したことのない音だったので、大変驚きました。そして、これらを聞き比べたのち、父は私に「どれが良いか」と聞かれ、わしは「タンノイは定位と良さと素直な音でクラシックには良さそうだが、他ジャンルではおそらくその帯域の狭さが気になると思う。ソナスはとても綺麗な音だけれど、交響曲では迫力に欠けそう。Renaissance90はかなり独特で、高域がちょっと物足りない気がするけど、音場感が独特で面白い。」と一通り答えた上で「他のスピーカーの音であればダイヤトーンと同じ傾向の音と言えるが、Renaissance90の音だけは他の国産では恐らく出ない音だと思う。Renaissance90が良いのでは」と締めくくりました。父も元々本命がそれだったようで、一方で予算的な理由からKappa 7.1iで済むのであればそれに越したことはない、と考えていたようですが、音以外にも接続端子の作りなどにかなりの差があったりしたことから、結局Renaissance90を購入することになります。自宅に到着後は、試聴時にも気になっていた高域の物足りなさと鳴りっぷりの悪さに父は大変苦闘し、結局アンプをセパレートに買い替えるなどして満足な音になるまでに数年を費やすことになるのですが…。
そんなことがあってからおよそ5年後、わしも社会人になって半年経ちだいぶ落ち着いてきたことから、今度は自分のシステムを刷新しようと思い立ち、「まずはスピーカーからだよなあ」ということで、かつて行った専門店でダイヤトーンDS-1000ZXとインフィニティKappa 6.2iを試聴することにしました。正直言えば、インフィニティは父が苦戦した過去を知っているだけあって、音さえ満足すればダイヤトーンにしようと考えていました。が、結局、ここでもハイハットの金属の質感のリアルさに差がありすぎて、結局インフィニティを選ぶことに。ダイヤトーンもさすがにDS-77HRよりは優れた音であり、とてもバランスが取れている整った音だったのですが、あらゆる評価項目で100点満点中全部80点という感じがあって、中途半端な感が否めなかったのがマイナスポイントでした。その約1年後に三菱電機がダイヤトーンの事業を縮小することになり、これが結局最後の別れとなってしまいました。その後、Kappa 6.2iも4年足らずで現行のリファレンススピーカーであるIRS-OMEGAに置きかわり、今日に至ります。
わしがダイヤトーンサウンドとの決別したのは、結局のところ最初にRenaissance90を試聴した時に感じた「ダイヤトーンと同じ傾向の音」が、DS-77HRの10年後の上位機種であるDS-1000ZXでもその印象が変わらなかったことがその要因として大きかったのだろうなあ、と思います。もっともその一方で、本当のダイヤトーンサウンドが目指す「ハイエンドな」世界を聴いてみたかったのですが、それが叶わなかったことは自分のオーデイオライフとして今でも悔やまれます。
失礼致します。
長年オ-ディオ楽しんで来ましたがSPは特に海外のトップレベルと言われるのを使いましたが製品寿命が短いし普段の調整も大変でした。
ある時、ダイヤト-ンのDS77hrを聴く機会ありましたが、海外製品にない上品、緻密繊細さに驚きました..値段にもです。
自分の求める音はダイヤト-ンでした。
その後もウ-ハ-のエッジのコンデションや内部充填物を調整しタ-ミナルを交換したりで25年くらい楽しんでます。
ほとんどがクラシックを聴いてます。
あまり響きの無い和室がダイヤト-ンに向いてると思います。
タンノイ オ-トグラフ、JBL4344、アルテックA7...には苦労しました。