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InfinityのIRS-βという弩級スピーカシステムを、FASTとカウンターポイントで駆動するこのシステムが奏でる音は、私の想像に反して実に静かな音でした。一聴すると「あれ、なんだか大したこと無いぞ」とも思えかねない音でして、例えばB&WやLINNの様な「おう、これは凄まじい!」という勢いで押してくるタイプではなく、少々乱暴な書き方をすれば、ただ淡々と鳴っている風でもあります。しかし、その音をさらに追求すると、ただ淡々と鳴っている訳ではなく、ひたすらに自然な音を追求していることがよく分かります。押しつけがましくはなく、かといって消極的でもない−そのバランスが実に絶妙という印象を受けました。
その中でも、特にホール録音のピアノが素晴しいです。スピーカを見ずに聴くと、「あれ?もしかして本物のピアノが鳴ってる?」と思えるほどに。ピアノのハンマーが弦を叩く瞬間からその余韻が消えていく様が全部リアルだからこそ表現しうる世界なのでしょう。
レンジやスケール感などは言うまでもなく広大そのもので、非の打ち所がありませんが、その一方でソフトはかなり選びます。一つはっきり言えるのは、私が持っていったポップスのボーカルはほぼ全滅。いつも試聴の際に持ち歩く「日本の美音」も「…あれ?」といった感じでした。いや、もちろん凄いことは凄いのですが、「背筋が凍るほど」という訳ではなく、「非常に当たり前に鳴る」のです。「機関銃の音とか、そういうのは勘弁してくださいね」と仰るご主人のお話等もふまえますと、つまるところ、このシステムは「アコースティック音楽専用」というコトなのでしょう。ついつい私などは「木を見て森を見ず」、即ち、「音を聴いて音楽を聴かず」に走ってしまいがちですが、ここのシステムは最初から森を見ることが目的で、木を見たければその音に自分からアプローチしなくてはならない。もちろん、ちょっとこっちが能動的になれば、木一本一本が鮮明に見いだせる訳でして、本来、オーディオが奏でる自然な音とは、かくあるべきなのかも知れません。
「オーディオが自然な音楽を奏でる」ということ、そして私の修行がまだまだ足らないな、ということを知る意味も含め、非常に素晴らしいシステムでした。「これからもどんどん良くなっていきますよ」というご主人の言葉もありましたし、またいつか試聴しに行きたいな、と思っています。
鳩山氏のご友人である桜木氏のシステム。6畳ほどの部屋の正面に大型スピーカがドーンという感じで収まっており、他にはオーディオラックとパソコン、本棚程度しか部屋にはなく、いかにもオーディオ専用の部屋、という雰囲気が漂います。アクセサリー等も実に凝りに凝ってるという感じで、思いつく対策はすべて行っているといったところ。筋金入りのオーディオマニアという感じでしょうか。
肝心の音ですが、部屋のスペースからして「音が直撃するような感じだったらどうしよう…」という当方の心配(?)をよそに、まとまっていました。アンプが力不足でff〜で頭打ちになるとか、分解能で若干の甘さを感じるなど気になる点もありましたが、頑張っていることは間違いないです。客観的には間違いなく「良い音」であり十分にリファレンスとなりうるでしょう。
ただ、その一方で「ここまで金銭面や生活スペースを犠牲にしても…」と思う気持ちはどこかに引っ掛かってました。その回答はその後陳平氏のシステムを聴くことで得られることとなります。
※※※2001/08追記※※※
なお、2001年8月現在、アンプはAccuphase P-1000+C-275Vとなり、部屋ももっと広い別室に移られたそうです。どんな音に進化しているのか実に興味深いところです。
研究室来の友人となる陳平氏。元々はパソコン仲間としてのつき合いでしたが、洗脳しました(笑)。今のシステムは2世代目です。
聴くジャンルは主に'60〜70年代のジャズで、セッティングもそれにあわせて調整されいると思われます。で、先日私の方で多少セッティングをいじった結果として、思わず「これいい、こんな音は初めてだ!」と唸ってしまう音になりました。f特はどちらかというと低音寄り、微細音はどちらかって言うとつぶれてるし、定位も良いとは言えません。ですが、歪み感のない素直な中域、そして独特の包み込むような雰囲気…いわゆるハイクオリティとは違う感じ(もちろんある程度のクオリティは確保してはいます)でしたが、しかし見事ととしか言いようのないまとめ方。これは怖い、引きずり込まれる音だ…と思ったのはこのときが初めてでした。
なるほど、このとき分かったのは私が「これは趣味だ」と思う音って言うのは、やはり主張がないと駄目なんだな、ってこと。ただただクオリティを要求するシステムってのは良かったとしても大したインパクトにならない。それに対し、多少のクオリティが劣っていたとしても主張があり、しかもそれに説得力を伴うとやられてしまうみたいです。
取りあえず、この音は私の中ではヒット。これをさらに陳平氏がどのようにチューニングしていくのが非常に楽しみです。
「肉声」を聴かせるダイヤトーン
1年半ぶりに本格的に聴いたTACH氏のシステムは、以前の硬質感が無くなり、適度に聴きやすさを持ちながら、コントラストが高いと言いましょうか、実に明朗な音を聴かせてくれました。ピアノはその打鍵の勢いが伝わるほどの適度な緊迫感があり、ギターはその弦を爪弾く指の動きが見えるかのよう。しかし、ここで特に取り上げたいのは「肉声」。その声は透明で、しかし十分血が通っているのです。雰囲気に逃げない確実な「歌声」がそこにはありました。
これはダイヤトーンスピーカ全般に言えることなのですが、とにかく「肉声」は素晴らしいものがあります。私の実家のDS-77HR型を、AVC-A1SEAのPURE DIRECTモードを使用し、「大音量(コンクリート床+厚壁+2重サッシでも外に音が漏れてしまうくらい)再生」を行ったことがあるのですが、高域、低域はともかくとしても、その声の伸びやかさに驚いた記憶があります。「ああ、この声はこのクラスを意識させないなぁ」と…。
TACH氏のシステムに話を戻しますと、さすがに実家のDS-77HR型より中高域の質はもちろん、低域も十分躍動感のあるものでした。が、さすがに最低域は無理。敢えてウイークポイントを上げるならその点ですかね。いずれにせよ、TACH氏は長い月日を掛けて、やっとダイヤトーンを飼い慣らした、と言って良いと思います。
正直、みなさんレベルが高い…、私も精進せねば、と思った次第でした。
ああ、古いデータでごめんなさい(^^;。でもまあ参考までに。
元々従兄弟もオーディオに興味があったわけじゃないんですが、私の実家に何度か通った結果として、一時期凝っていたことがありました(最近は車に走ったのでオーディオまでは手が回ってない模様。もっともわしが近隣に引っ越したこともあって、また復活の兆し)。んで、これは2世代目のシステムでしたが、とっても凄い音でした(^^;。
なにが凄いって、f特がいわゆる「ピラミットバランス」しかもかなりきつめです。高音なんぞ無いに等しい(笑)。CDを来ていてもAMラジオじゃないのか?という気になれます。臨場感は普通、定位はボーカルからして行方不明(笑)、なにを聴いてもまるでDOLBY NRではないカセットテープをDOLBY NRオンにして聴いているような音で、残念ながら当時の私にはその良さが全く分からず「駄目な音」の一刀両断でしたが、従兄弟曰く「そういわれる音にしたかった。これが俺の音。他の人にはその良さが分からないだろう。」。…?????、当時の私には完全に理解不能。今聴けばその意味も分かるのかも知れないですが、残念ながらそのシステムは既に存在しないのが寂しいところ。なるさわオーディオ人生の中で最大の不覚かも知れません。(注:いや、今聴いても「駄目で終了」かも知れないんだけどさ(笑))
※追記:2006年7月1日に、DCD-3500RGを除いた形での本システム試聴を行った際のレポートを、同日の日記に掲載しました。
私の中でイメージされている「リファレンス」的システムです。どちらかというとアナログ再生をメインとしていますがCDもまあまあ聴けます。
音の傾向としては若干丸めですが、濃密で重厚。どのソースについても破綻をきたすことなく、安心して聴けるものとなっています。その「丸い」傾向から、特に高域の「キラキラ感」をいい音だ、と思っている人(実際多いんだけど、そんな音は自然界に存在しない)にとって、一聴した後の感想を「大したこと無いじゃん」とされることが多いのですが、聴けば聴くほど懐の深さに驚かされ、実際に自宅に帰ってから愕然とされることが多いそうです。
普段聴く音量としては中の大くらいで、ジャンルはクラシックを中心とし、歌謡曲なども聴いているようです。